いわゆる相続分の譲渡に対して控訴審も贈与に当たると認定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:09/26/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 いわゆる相続分の譲渡が贈与に当たるものか、相続そのものに当たるのかの判定が争われた事件で、東京高裁(太田幸夫裁判長)は贈与により財産を取得した個人に当たることから、贈与税が課されたのは妥当と判断、納税者の控訴を棄却した。

 この事件は、被相続人が生前、相続財産を法定相続人(A・B)と法定相続人(C)の夫(D)に遺贈する旨の遺言を公正証書によってしていたことから、相続開始後、相続人Aが相続を放棄し、相続人B・CがCとDの子に「相続分の一部を譲渡する」旨の相続分譲渡証書を作成して遺産分割をしたことが発端になったもの。

 これを受けて、財産を取得したC・Dの子(控訴人)は相続税の申告をしたわけだが、この申告に対して原処分庁が相続税額を零円とする更正処分をする一方、贈与税の決定処分と無申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、相続分譲渡によって得た利益は贈与財産には当たらないと主張、原処分の取消しを求めたものの一審で敗訴したため、控訴していたという事案だ。

 原審のさいたま地裁は相続分の一部譲渡は有効であるものの、C・Dの子らは法定相続人ではないから、相続によって財産を取得した個人ではなく、贈与により財産を取得した個人に当たると指摘して贈与税が課税されるべきであると判断、いずれの請求も棄却していた。

 これに対して控訴審も、相続分の譲渡は当然に許容されると示唆するとともに、控訴人等がした相続分の一部譲渡証書は内容を確定し得ないもので、無効であると指摘。結局、遺産分割協議の時点で法定相続人から相続財産の一部を贈与契約によって取得したものであると認定、贈与税の納税義務を負うと原審と同様の判断を下して、控訴を棄却している。

(2005.11.10 東京高裁判決、平成17年(行コ)第140号)