遺産分割審判の確定を理由にした相続税の更正の請求を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:10/06/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 遺産分割審判の確定が、相続税の更正の請求に係る特則事由に該当するか否かの判断が争われた事案で国税不服審判所は、更正の請求直前の課税価格が民法に基づく相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されたものではないため要件を欠いていると判断、棄却した。

 この事案は、養子(審査請求人)に遺産の全部を相続させる旨の記載があった遺言公正証書に基づいて請求人が相続税の申告をした後、他の共同相続人から遺言無効確認訴訟を起こされたことがそもそもの発端。その結果、最高裁で遺言無効が確定、遺産分割審判で被相続人の遺産が分割された。この審判の内容を不服とした請求人が即時抗告したが、結局、最高裁でも特別抗告が棄却されたわけだ。そこで、遺産分割の審判の確定を理由に更正の請求をしたところ斥けられたため、その取消しを求めて審査請求していた事案だ。

 これに対して裁決は、相続税の更正の請求に係る特則事由は、単に相続財産の分割、分属が決まった結果に従って相続税の課税価格を計算すると、申告、更正、決定に係る課税価格と異なるというだけでは足りず、分割前には遺産共有の状態にあった分割の対象とされた財産について、民法に基づく相続分、包括遺贈の割合に従って課税価格が計算された申告、更正、決定が行われていること、及び申告、更正、決定における未分割財産の分割が必要であり、申告、更正、決定がされていない場合は相続税の更正の請求に係る特則の要件を満たしていないと指摘した。

 しかし、この事例の場合、最高裁判決の前に申告がされ、更正の請求直前における請求人の相続税の課税価格は、最高裁判決によって未分割状態にあった相続財産について民法に基づく相続又は包括遺贈の割合に従って計算されていたものでないことは明らかであり、特則事由の要件を欠くと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2008.10.29裁決)