死亡共済金はみなし贈与財産ではないと認定、控訴を棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/21/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 死亡した父親が会員になっていた社団法人の共済制度に基づいて受給した死亡共済金が、みなし贈与財産に該当するか否かの判断が争われた事件の控訴審で、大阪高裁(森宏司裁判長)は会員の相互扶助を目的とした共済金の1つであり、贈与と同様の経済的利益の移転があったとは認められないと述べて原審の判決内容を支持、控訴を棄却した。

 この事件は、社団法人の会員だった控訴人の父親の死亡に伴い、同法人が営む共済制度に基づいて受給した父親の死亡に係る死亡共済金を、原処分庁がみなし贈与財産ではなく一時所得と認定、所得税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側がその取消しを求めて提訴したのが発端になったもの。

 しかし原審の大阪地裁が棄却したため、納税者側が更にその取消しを求めて控訴したという事案である。つまり、みなし贈与財産ということであれば所得税法9条1項15号の非課税所得に該当するため、更正処分は違法という主張を展開したわけだ。

 これに対して控訴審は、実質的に贈与・遺贈と同様の経済的利益を享受した者がいる場合に、租税回避を防止するため、税負担の公平の見地から、贈与・遺贈による取得とみなすことにあると相続税法9条の趣旨を説明。また、同条が定める「対価を支払わないで………対価を受けた場合」とは、贈与と同様の経済的利益の移転すなわち一方が経済的利益を失い、他方が何らの対価を支払わずに経済的利益を享受したことが必要になるとも解釈した。

 その上で、社団法人の共済制度に基づいて受給した父親の死亡に係る死亡共済金は、会員の相互扶助を目的にした共済金の一つであり、父親が納付した負担金も共済金の受給資格に関するものとして一定とされ、退会の際に原則として返還されないというものであると認定。結局、贈与と同様の経済的利益の移転があったとは認められないため、みなし贈与財産には該当しないと判示して、原審と同様、棄却の判決を言い渡した。

(2014.06.18大阪高裁判決、平成26年(行コ)第6号)