相続の開始を知った日は死因贈与の履行が確定した和解の日
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/18/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 相続の開始を知った日の判断が争われた事件で、国税不服審判所は相続の開始を知ったのは、和解で死因贈与契約の一部の履行が確定した日であると判断、原処分を全部取り消した。この事件は、原処分庁が相続税の申告・納付に対して無申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、被相続人の従妹である審査請求人が期限内申告であると主張して、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁はまず、死因贈与契約の効力に係る争いがあっても、相続税法上、租税債権の成立を妨げるものではないと指摘。つまり、死因贈与の効力発生時期は贈与者の死亡時であり、かつ死因贈与は民法554条の遺贈の規定が準用されるから、被相続人の死亡を知った日が相続の開始があったことを知った日となるため、相続税の申告書は期限後申告書になると主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。

 これに対して裁決は、死因贈与は書面によらないものであり、書面によらない贈与はその履行が終わるまでは各当事者が自由に撤回することができると解釈。その上で、請求人が、被相続人の有していた預貯金の支払いを求める訴訟の際、相続人が死因贈与契約を撤回する旨を主張していたことに触れ、訴訟上の和解成立前の時点では、被相続人の全財産を死因贈与で取得したとする請求人の権利は極めてぜい弱なものであるから、和解成立の前に請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったものとは認められないと指摘した。

 そして、和解に伴い預金の一部のみを死因贈与で取得したのであるから、被相続人がその全財産を請求人に死因贈与する旨の死因贈与契約の一部を撤回したものとみるのが相当であり、和解に伴い一部撤回後の死因贈与の履行が確定したと認めるのが相当であるとも指摘した。

 結局、請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったのは、その履行が確定した和解の日というべきであるから、和解の日の翌日から10日以内に提出された申告書は期限内申告書であると判断して、原処分を全部取り消したわけだ。

(2013.06.04 国税不服審判所裁決)