規制前の海外シフト財産に対する贈与課税を妥当と判決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:07/06/2005  提供元:21C・TFフォーラム



 非居住者を利用した海外財産シフトによる贈与スキームが規制されたのは平成12年の税制改正の際だが、この規制措置が手当てされる3年前に香港で行われた株式の贈与に対する贈与税の決定処分の可否判断が争われた事件で、東京地裁(菅野博之裁判長)は、贈与契約当時、受贈者の生活の本拠が香港に移転していたとは認められないと判断、贈与税を課した原処分を妥当とする旨の判決を下した。

 かつては、日本国内に住所を持たない制限納税義務者の場合、海外にシフトした財産の贈与は課税対象外だったため、これを利用した租税回避スキームが数多く行われていた。そこで12年の税制改正の際に、国外財産でも一定の者が取得したものについては課税の対象に加えられることになった。

この事件は、この規制措置が手当てされる年の3年前に香港に住所を移していた孫に対する祖父からの贈与をめぐって、贈与の時期の判定、受贈者の住所地、仮装・隠蔽の有無が争われていたもの。つまり、孫が香港に居住したように見せかけて祖父の財産を海外にシフト、贈与税の負担を回避した海外シフト財産による租税負担回避スキームと認定、原処分庁が贈与税の更正処分を打ってきたという事案だ。

 これに対して判決は、租税回避のための香港居住という外形の作出、ホテル宿泊や短期契約のアパートへの移転など居住安定性の欠如、大部分の期間は日本に滞在、家族が国内のマンションに居住している事実等々の事実関係を根拠に、贈与契約当時、生活の本拠が香港に移転していたとはいえないと認定、非居住者性を否定した。また、仮装・隠蔽の判断でも、贈与時点において非居住者であることの外形を作出していたと認定、仮装・隠蔽の事実が認められると判断した。納税者は判決を不服として控訴中だ。

(2005.01.28 東京地裁判決、平成15年(行ウ)第518号)