小規模宅地特例めぐる注目裁判がついに確定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:02/25/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 小規模宅地特例の複数ヵ所適用をめぐり争われていた裁判で、国税側の「不本意な勝訴」が確定した。小規模宅地特例は、相続や遺贈によって取得した土地のなかに、被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族の居住用宅地や事業用宅地がある場合、一定面積を限度として評価減が認められる相続税の優遇措置(租税特別措置法第69条の4)。

 被相続人が住んでいた自宅を相続して引き続きそこに居住する場合、240平方メートルまでの部分について80%の評価減が認められる。自宅や店舗に多額の相続税がかかると、ほかに財産がない場合はそれらを売却しなければ納税できないという事態になるが、同特例を適用することで住居や店舗を失わずにすむ。

 原告は平成15年9月、佐賀県内にマンションと一戸建の2ヵ所の住宅を所有していた母親の死亡に際し、2ヵ所の土地に同特例を適用して計算した相続税の申告書を佐賀税務署に提出。しかし、税務署はマンションへの同特例の適用を認めなかったことから不服申立を経て裁判となった。

 一審の佐賀地裁では、同特例を定めた措置法69条からは2ヵ所への適用を排除する内容は読み取れないとして納税者が勝訴したが、二審の福岡高裁では「居住の実態」が重視され、「マンションが生活の拠点として使用されていたとは認められない」として逆転敗訴。これを受け、納税者側は特例の2ヵ所適用を勝ち取るべく最高裁に上告していたが、このほど最高裁がこの上告を「不受理」としたため福岡高裁判決が確定した。

 納税者側敗訴の体裁ではあるが、同特例の適用対象を「1ヵ所のみ」と主張してきた国側としては、本意の部分では敗訴したことになる。なお、平成22年度税制改正では、小規模宅地特例の適用対象について「特定居住用宅地等は、主として居住の用に供されていた一の宅地等に限られることを明確化する」こととされており、同22年4月1日以降の相続または遺贈からの適用となる見通しだ。