借地権価額の認識がないのは明らかと判断、借地権控除を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:07/24/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 借地権が設定されている土地の評価をめぐって、自用地価額から控除すべき借地権価額があるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は賃貸人と賃借人との間に借地権の価額に関する認識のないことが明らかであることから、自用地としての価額により評価すべきである判断して、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人が相続によって取得した土地は相続開始時に図書館及び駐車場の敷地として地方公共団体に賃貸していたことから、自用地価額から借地権価額を控除して相続税の申告をしたことが発端となった。

 この申告に対して原処分庁が、地方公共団体は借地権者の経済的利益を享受しておらず、相続によって所有権が移転する場合は地方公共団体に土地を譲渡する旨の特約が交わされていたことから土地の価額が何ら減損することもなく、自用地と同額の価額も保証されている事情などを重視して相続時点における借地権価額の控除は認められないと認定、相続税の更正処分等をしてきたわけだ。そこで、請求人が原処分庁の事実認定には誤りがあると指摘して、その取消しを求めたという事案である

 しかし裁決は、借地権が設定されている土地の減額を定めた財産評価基本通達25の(1)の定めを踏まえた上で、価額を認識する必要のない借地権が存する土地については借地権の価額に相当する価額の減額が生じていないことから、自用地価額から借地権価額を控除する評価方式を画一的に適用するという形式的な平等を貫くと、却って実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであると指摘した。

 その結果、審査請求された土地の評価に際しては財産評価基本通達25の(1)の定めを適用しない、つまり、自用地価額から借地権価額を控除しないのが相当と判断して、審査請求を棄却した。

(国税不服審判所、2011.11.17裁決)