贈与時に国内に住所はなかったと認定、1300億円超の贈与税を取消し
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/01/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 両親から贈与された外国法人に係る出資持分の贈与を受けた時、贈与税の課税対象となる国内に住所を有していたか否か、つまり非居住者として贈与税の課税対象となるか否かの判断が争われた事件で最高裁は、受贈者が国外財産の受贈時点において国内に住所を有していたとはいえないと認定、納税者側の主張を全面的に認める判決を言い渡した。

 この事件はいわゆる武富士事件と言われるもので、両親から長男への外国法人に係る出資持分の贈与に対して、原処分庁が贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をしたことが発端。そこで上告人側が、贈与時に国内に住所を有していなかったのであるから贈与税の納税義務を負わないと主張して、原処分の取消しを求めて提訴したところ、一審が納税者側の主張を認めたものの、控訴審は香港の居宅が長期の滞在を前提とする施設ではなかったことなどを理由に挙げて、贈与を受けた時点において納税者の生活の本拠である住所は国内にあったものと認めるのが相当であると認定、贈与税の納税義務を負うと判示したことから、上告して更に原処分の取消しを求めていたという事案である。

 最高裁はまず、住所とはその者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心をなすものであり、一定の場所がある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かで決すべきものと解するのが相当であると解釈。また、事実認定の結果、贈与時点において香港の居宅は生活の本拠たる実体を有していたものというべきであり、国内の住所地が生活の本拠たる実体を有していたということはできないという認定のもとに、上告人(納税者)側の主張を認容する判決を言い渡している。

(最高裁第二小法廷、平成23年2月18日判決、平成20年(行ヒ)第139号)