偽りその他不正の行為の存在を否定、納税者が全面勝訴
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:12/21/2004  提供元:21C・TFフォーラム



有限会社の出資持分の譲渡に対するみなし贈与の認定の可否、偽りその他不正の行為の認定に伴う贈与税の決定処分、無申告加算税の賦課決定処分の適否が争われた事件で、横浜地裁(川勝隆之裁判長)は納税者の主張を全面的に認容する判決を下した。

 この事件は、純資産価額方式の評価差額に対する法人税相当額の控除に着目して、意図的に評価差額を創出、贈与税、相続税の課税対象額を減少させる節税スキームで、いわゆるスリーエス方式と呼ばれるものがベースになったもの。

 つまり、親が借入金等を原資に第一法人を設立後、第一法人の株式等を現物出資して持株会社となる第二法人を設立、その際の受入価額を著しく低い価額に設定することで第二法人の純資産価額に多額の評価差額を意図的に作出させる方法だ。

 これによると親から子に第二法人の株式等を形式的な財産評価額で売却する際には時価の2分の1程度になり、子はその取得資金を金融機関等からの借入金で賄うことになるが、第二法人が第一法人を吸収合併して第二法人が減資払戻しを実行することで、親が出資した資金を子が取得、金融機関等からの借入金の返済等に充てるという莫大な節税効果のあるスキームでもあった。

 判決はまず、評価差額の創出がもっぱら相続税負担の軽減を目的にしたものであり、相続税法7条の「著しく低い価額の対価による財産の譲渡」にあたる認定。しかし、偽りその他不正の行為の有無については、贈与税の賦課徴収を著しく困難にするような偽計その他の工作をしたものとは認められないと判示した上で、決定の期間経過後になされた贈与税の決定処分は違法、決定処分に基づく加算税の賦課決定処分も違法であると判示した。

(2004.03.17 横浜地裁判決、平成13年(行ウ)第28号)