売買残代金請求権は被相続人には帰属していないと判断
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:06/29/2004  提供元:21C・TFフォーラム



 相続開始時に売買契約締済みの土地をめぐって、相続税の課税財産が土地なのか、売買残代金請求権(債権)であるのかが争われた事案で、国税不服審判所は売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していたことを肯定できないと指摘して課税財産は農地であると認定、更正の請求には理由がないとした原処分庁の通知処分を全部取り消した。

 この事案は、審査請求人が相続によって取得した土地(農地)の中に売主を被相続人、買主をM法人とする売買契約が締結されていた土地があったものの、売買残代金が支払われないなど契約の履行が遅延していたことから売買契約を解除した上で減額更正の請求をしたところ、原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めていたもの。

 原処分庁は、土地の売買契約締結後、契約完了までの間に売主に相続が発生した場合の相続税の課税財産は売買残代金請求権になり、その価額は債権として評価すべきであると反論、審査請求の棄却を求めていた。

 これに対して裁決は、売買契約に係る売主と買主双方の義務が誠実に履行され、その債権が確定的に被相続人に帰属していると肯定できる場合であれば、原処分庁の主張のように解釈できると指摘。しかし、被相続人の責めに帰すべき理由がなく、もっぱら買主側の事情で履行が遅延、契約締結後2年8ヵ月経過した相続開始時にも遅延状態にあるだけでなく、相続開始時から1年7ヵ月経過後に契約が解除された事情を考慮すれば、相続開始時点に売買残代金請求権が被相続人に確定的に帰属していたことは肯定できないため、相続財産は農地と認めるのが相当と判断、通知処分を全面的に取り消す裁決を下している。

(国税不服審判所、2003.01.24裁決)