和解は相続回復請求権の放棄と認定、更正の請求を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:07/15/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 遺産を占有管理していた表見相続人(養子)からその返還を受けられなかったことを理由にした相続税の減額更正の請求の可否が争われた事件で、神戸地裁(佐藤明裁判長)は国税通則法23条1項、2項の他の更正の請求の理由、及び相続税法32条の更正の請求の理由のいずれにも該当しないと判断、原告らの請求を棄却する判決を言い渡した。

 この事案は、養子が唯一の相続人として相続税の申告をした後、原告らが養子縁組無効確認訴訟を提起、一審は敗訴したものの控訴審が養子縁組無効を確認する判決を言い渡して、判決が確定したことが発端。この確定判決後、原告らは一部を相続回復請求権である旨を記載した申告書を提出して相続税を納付する一方で、養子に対して相続回復請求訴訟を提起した結果、養子が和解金を支払うことでその余の請求を棄却する旨の和解が成立した。

 この和解の結果、原告らは相続回復請求権が裁判上の和解金にまで減額されたと主張、国税通則法23条に基づく相続税の減額更正の請求をしたわけだが、原処分庁が更正の請求を認めなかったため、その取消しを求めて提訴したというのが一連の流れだ。

 これに対して判決は、原告らが放棄した請求権は相続回復請求権以外にありえず、和解の内容は遺産の範囲自体が事後的にせよ変更することはなく、逸失した遺産をどの範囲で返還させるかについて互譲の合意をしたものであるから、原告らが取得すべき遺産が和解金にまで縮減されたという主張は採用できないと原告らの主張を否定。結局、原告らが主張するところは、国税通則法23条1項及び2項、相続税法32条の更正の請求のいずれの理由にも該当しないと判示、原告らの請求を斥ける判決を言い渡している。

(2007.11.20 神戸地裁判決、平成18年(行ウ)第59号)