金員の取得は死因贈与ではなく贈与と認定、原処分を取消し
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:01/22/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 被相続人が主宰する会社の従業員とその娘に交付された贈与証明書に基づいて、その従業員と娘が受領した金員の取得原因が死因贈与によるものか、贈与によるものかの判定が争われた事案で、国税不服審判所は、民法554条(死因贈与)の法的見解を誤った処理と判断、原処分を全部取り消す裁決を下した。

 この事案は、審査請求人らが相続税の課税財産として申告していた未収債権の一部は、被相続人が従業員らに対して生前に贈与していたもので、相続財産たる未収債権ではなかったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が従業員らは被相続人から贈与ではなく死因贈与によって金員を取得したものであるとして、請求人らと従業員らを相続税の納税義務者として相続の総額等を計算し直したところで更正の請求を一部認容する更正処分を行ってきたため、審査請求人らがその取消しを求めて争われていたもの。

 原処分庁は、2回目の贈与については被相続人の死亡を停止条件又は効力発生の期限とした死因贈与であること、贈与証明書・和解証明書を作成した弁護士が2回目の贈与は死因であることを明確に認識していることを理由に、審査請求の棄却を求めていたわけだ。

 これに対して裁決はまず、贈与証明書の記載内容を調べた上で、その記載内容から従業員は被相続人が死亡しなくても贈与を受けることができ、履行時期の記載内容も単に贈与の履行時期の特約に過ぎないと認定し、贈与者の死亡により効力が生ずる民法554条の死因贈与には該当しないと判断した。また、弁護士の答述からも、被相続人が「もし死ななければ贈与しない」という意思表示をしたものとは認められないとも指摘。結局、死因贈与と認定した原処分は法的見解を誤ったものであり違法と判断、取り消している。

(国税不服審判所、2007.06.18裁決)