債権回収の見込みのないことが客観的に確実でないと裁決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:06/22/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 貸付金の一部の回収が不可能又は著しく困難であるか、元本の額の減額評価ができるか否かの判断が争われた事案で国税不服審判所は、貸付先の会社の資産状況及び営業状況の破綻が明白かつ債権回収の見込みのないことが客観的に確実と言い得る状況にあったとは認められないから、貸付金の一部を回収不能とした減額は認められないと判断、棄却した。

 この事案は、原処分庁が被相続人の債務の一部は債務控除の対象にならないと否認、更正処分したことが発端。そこで請求人が、債務控除の否認については争わないものの、相続財産として申告した貸付金債権の一部は、相続開始日において回収不能であるから元本を減額すべきであると主張して、更正処分の一部取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して裁決は、貸付先は相続開始日以降、現在に至るまで存続し、従業員のうち障害者を関係グループ会社に出向させ、主にその出向先からの出向料及び国等からの助成金によって営業外収益を計上している。また、事業目的を不動産売買に拡大した後、裁判所の競争入札に参加したり、不動産取引による売却益を4000万円近く計上していることから、営業が停止していたとは認められないと指摘。さらに、貸付先は同族会社であり、関係グループ会社の代表者も相続人又はその親族、かつ借入金債務も被相続人及びその親族からのものが殆どで、返済期限等の定めもないため直ちに返済を求められる可能性は低く、外部からの借入れに比べて有利であるとも指摘した。

 その結果、相続開始日において、財産評価基本通達205が定める「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」、つまり、事業経営の破綻が客観的に明白で、債権回収の見込みのないことが客観的に確実であると言い得る状況にあったとは認められないと判断、審査請求を棄却した。

(国税不服審判所、2009.05.12裁決)