相続財産は代金債権ではなく土地建物と判示、納税者勝訴
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:02/14/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 手付契約に基づく解除権の行使によって土地の売買契約が相続開始後に解除された場合の相続税の課税財産は代金債権か土地建物かの判断が争われた事件で、広島地裁(植屋伸一裁判長)は売買契約が解除権の行使によって解除された場合に該当すると認定、相続税の課税財産は土地建物になると判示して原処分を全部取り消す判決を言い渡した。

 この事件は、被相続人が土地建物の売買契約を交わして手付金を受け取った後に相続が開始したため、相続人らが手付金の倍額を支払って売買契約を解除した後、課税財産を土地建物として申告したところ、原処分庁が課税財産は土地建物ではなく、売買残代金請求権であるとして更正処分等をしてきたため、相続人らがその取消しを求めていたもの。原処分庁側は、相続開始時点において被相続人と売買先は売買契約を履行する意思を強固に有し確実に履行される状態にあったと強調、代金債権が課税財産であると主張した。

 これに対して判決は、事実関係を整理した上で、売買契約の解除は手付契約に基づく解除権の行使による解除であるから、更正の請求が認められる国税通則法23条2項3号の「解除権の行使によって解除された場合」に該当すると認定。その結果、民法545条1項が定める「解除の遡及効」は課税関係に影響を及ぼすことになると解釈した。

 つまり、手付契約に基づく解除であるから土地建物の売買契約は被相続人が売買契約を交わした日に遡って消滅し、相続開始日においては売買契約が存在せず、売買代金債権も存在しなかったことになるというわけだ。結局、相続税の課税財産は土地建物と認定して、原処分を全て取り消す判決を言い渡した。国側敗訴のまま、一審で事件は確定している。

(2011.09.28 広島地裁判決、平成22年(行ウ)第4号)