株式保有特定会社の25%基準による一律の判定方法を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/30/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 財産評価基本通達上の大会社がいわゆる株式保有特定会社に該当するか否かを判定する際に一律に25%以上の株式を保有しているか否かの基準で判定することの合理性が争われた事件で、東京高裁(三輪和雄裁判長)は納税者側の主張を全面的に認容した原審判決を支持、株式保有割合が25%以上の会社を一律に株式保有特定会社と定めた平成2年当時の判定基準が今なお合理性を有しているとはいえないと判示して、国側の控訴を斥けた。

 この事件は、相続で取得した株式を株式保有特定会社の株式に当たると原処分庁が認定して、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側がその取消しを求めて提訴したところ、一審の東京地裁が納税者側の主張を認容したため、課税当局が原審判決の取消しを求めて控訴していたという事案である。つまり、納税者側が相続した株式の会社が純資産価額方式又はS1+S2方式の特別の評価方式による評価が求められる株式保有特定会社に該当するか否かが争点になっていたわけだ。

 控訴審は、納税者側の主張にはいずれも理由があると判示。その上で、株式保有特定会社等が設けられた平成2年当時を振り返り、大会社につき株式保有割合25%以上の評価会社を株式保有特定会社とみなし、特別な評価方式によって評価すべきものとしたことには合理性が認められると指摘。

 しかし、評価通達が改正された平成2年当時と比べ、相続が開始した平成15年当時は独禁法の改正による持株会社の一部解禁等によって会社の株式保有に関する状況が大きく変化していることなどを踏まえると、大会社につき株式保有割合が25%以上の評価会社を一律に株式保有特定会社と定める判定基準が相続開始時点において合理性を有していたとはいえないことから、株式保有割合に加えて企業としての規模や事業の実体等を総合考慮して判断するのが相当と判示した。
 
 この判断を受け入れて国税庁は上告を断念するとともに、株式保有特定会社の判定基準を改めることにした。

(2013.02.28 東京高裁判決、平成24年(行コ)第124号)