生産緑地の買取申出は可能と認定、納税者の請求を棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:06/25/2002  提供元:21C・TFフォーラム



 市町村長に買取申出ができないことを前提に、生産緑地を評価減して申告したことの可否が争われた事件で、名古屋地裁(加藤幸雄裁判長)は買取申出ができないと解することはできないと判断、増額評価し直した原処分を適法とする判決を下した。

 この事件は、市町村長に買取りの申出ができないことを前提に生産緑地の評価をして行った相続税の申告に対して、原処分庁が買取申出は可能であったと認定、増額評価した上で更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分をしたことが発端になったもの。つまり、相続開始時に市町村長に買取申出ができたか否か、生産緑地法10条の主たる従事者に該当するか否かが争点になっていたわけだ。生産緑地は、贈与の場合など買取申出が不可能な場合は最高35%評価減が認められるが、相続等の場合は買取申出が可能との判断から5%の評価減しか認められない。しかし、実際に市町村長が買取りに応じるケースは皆無というのが現状だ。そこで、納税者サイドは、買取申出が可能か否かの判定は主たる従事者として生産緑地の維持管理が可能か否かの実質的判断によるべきであり、相続開始時点においてはこの点を確定できないと主張、増額評価の取消しを求めていた。

 これに対して判決は、経営資金や納税等の農業経営に係る新たな負担を相続人にもたらしたのであるから、被相続人は相続開始時点において主たる従事者であったと認定、買取申出が可能との前提で増額評価した原処分は適法であると判示した。ザル法といわれる生産緑地法、評価通達のあり方が問われた事件でもある。間もなく、控訴審の判決が下る予定だが、都市近郊農家では今後も起こりうるケースだけに、高裁判決には注目が必要だ。      

(2001.07.16名古屋地裁判決、平成12年(行ウ)第9号)