相続人名義であるものの総合考慮すると被相続人の財産と認定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:09/15/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 相続人名義の預貯金・国債等が相続財産か否かの判断が争われた事件で東京地裁(小林宏司裁判長)は、相続財産か否かの帰属は財産の管理及び運用の状況、国債等の購入原資の出捐者等を含む諸事情を総合考慮して判断すると、いずれも被相続人自らが原資を出捐して財産を管理していたことが伺えることから相続財産に該当すると認定、相続人の主張を斥けた。

 この事件は、相続人が、相続税の申告の際に申告書に相続財産として記載した相続人名義の預貯金等を、相続人の固有財産であるとして更正の請求をしたところ、原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴した事案。

 相続人側は、各財産の原資については祖母からの贈与、貸付金の返済金、幼少期からのお年玉、小遣い等によるものであり、さらに被相続人から贈与された財産で構成され、各財産の管理・運用も、被相続人の居宅にある相続人の自室内に保管していたことは、被相続人の財産とは区別して相続人自身が管理していたことを示すものであると主張した。

 これに対して判決はまず、納税義務者が自ら記載した申告内容が真実に反するものであることを主張立証すべきであり、各財産が相続人名義であることは財産の帰属を判断する際の重要な事実になると指摘した上で、その帰属は財産の管理・運用の状況、購入原資の出捐者等を含む諸事情を総合考慮して判断すべきであると指摘した。家族内では、真実の帰属者以外の家族の名義で財産を取得、維持される例もしばしば見受けられるからだ。

 しかし、被相続人が相続人名義の預金等と被相続人名義の預金等が同程度になるように、自ら管理・運用していたと認められ、相続人自らが管理していたという主張には客観的な裏付けが乏しいとも指摘した。また、各財産の原資の出捐も、預金口座等が開設された当時の相続人側の状況が勤務先からの収入にとどまり、かつ学生だったことを踏まえると、各財産の原資は被相続人の事業で得た収入つまり相続財産と推認するのが相当であるから、相続人の固有財産として認めるだけの証拠が乏しいと判示して、請求を棄却している。

(2014.09.30東京地裁判決、平成24年(行ウ)第351号)