未確定の債務等超過分の控除は他の相続人の合意と調整が前提
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:02/12/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 遺留分減殺請求に係る債務等超過分、葬式費用を控除できるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、債務等超過分の控除が可能な者が複数いる場合はその者らとの調整・合意が必要と解釈して債務等超過分の控除は否定したが、葬式費用は指定された相続分に応じて控除するのが相当と判断して、結果的に一部取消しの裁決を言い渡した。

 この事件は、遺言により被相続人の全ての財産を取得した審査請求人が、他の相続人からの遺留分減殺請求を受け、遺留分減殺額を控除して相続税の申告をし直したのが発端。しかし原処分庁が、遺留分減殺請求に基づいて弁償すべき額が確定していないため、遺留分減殺請求分を除いて課税価格を計算すべきであると判断して更正処分等をしてきたため、原処分の一部取消しを求めて審査請求がされた事案である。

 これに対して裁決は、共同相続人が法定相続分の割合に応じて負担する場合の債務及び葬式費用が相続財産の価額を超える場合、その債務等超過分を他の共同相続人の相続税の課税価格の計算上控除して申告することは認められるが、債務等超過分の控除が可能な相続人が複数いる場合、それぞれが任意に債務等超過分を控除して相続税の申告をすると、債務等超過分の重複控除も想定されるため妥当ではなく、公平性に欠けるため、これらの者の間においてその配分に関する調整・合意が前提になると解するのが相当と指摘。

 しかし、債務等超過分の控除が可能な他の共同相続人の調整・合意がないことから、更正の請求における相続税の課税価格の計算上、他の共同相続人に生じた債務等超過分まで控除することはできないと判断して請求人の主張を斥けた。

 ただ葬式費用については、民法900条から902条に定める相続分又は包括遺贈の割合に応じ、各人の課税価格の計算上控除できるから、指定された相続分に応じ葬式費用を負担するものとしてその全額を課税価格の計算上控除するのが相当であると指摘、結局、審判所認定額を上回る部分については原処分の一部を取り消す旨の裁決を言い渡している。

(国税不服審判所、2012.05.15裁決)