所有権の帰属が争われている財産の延納担保の申請にNO
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/06/2004  提供元:21C・TFフォーラム



所有権の帰属をめぐって係争中の不動産が、相続税の延納申請担保財産として適格か否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は訴訟の結果によっては公売等で換価し、国税に充当させることができない恐れがあると指摘、審査請求を棄却する裁決を下した。

 この事案は、遺言無効確認等請求訴訟が提起され、遺言公正証書によって相続した不動産の所有権移転登記の抹消登記手続を請求されていた審査請求人が、延納を申請、延納担保財産としてこの係争中の不動産を提供したのが発端。

 これに対して原処分庁が、延納申請担保財産として不適格であることから担保変更要求通知をしたものの、審査請求人は代わりの担保財産も、予告登記も抹消されていなかったことから延納申請を却下したため、その取消しを求めて審査請求していたという事案だ。審査請求人は、変更期限までに担保物件を提供したのであるから、延納申請却下処分は違法である旨主張するとともに、却下処分に連動した督促処分の取消しも求めていたわけだ。

 しかし裁決は、延納の担保として提供される財産は、担保に係る相続税額を確実に徴収することができる金銭的価値を有するものでなければならず、延納許可が取り消された場合は滞納処分の例によって換価し、その換価代金を国税に充当することが困難なことが予測される財産は延納の担保として不適当と解釈。延納担保として提供された財産は所有権の帰属が訴訟で係争中の財産であり、仮に原処分庁が受け入れて抵当権を設定したとしても、訴訟の結果によっては、その抵当権によって担保物件を公売等で換価し、国税に充当することができない恐れがあると指摘、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、20002.12.4裁決)