特段の事情がない限り居住に供していたと解釈するのが妥当
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:01/30/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 小規模宅地等の評価減特例の適用をめぐって居住の用に供されていたか否かの判定が争われた事件で、最高裁(上田豊三裁判長)は、相続開始直前に土地が更地となり、仮換地も未だ居住の用に供されていなかったのは土地区画整理事業のために仮換地指定されたことにより土地の使用収益が禁止された結果、やむを得ずそのような状況に置かれていたのであるから、特段の事情のない限り居住の用に供されていたと解するのが相当と判示、原審の福岡高裁の判決を破棄するとともに、差戻しを命じる判決を下した。

 この事件は、小規模宅地等の評価減特例を適用して相続税の申告をしたところ、原処分庁が否認、相続税の更正、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて最高裁まで争われてきた事案だ。原審の福岡高裁は、同特例の適用に当たっては相続開始直前に被相続人等が現に居住の用に供していたか、少なくとも相続開始時に現実に居住用建物の建築工事が着工され、居住用建物の敷地として使用されることが外形的、客観的に明らかな状態にあることが必要という判断から棄却の判決を下していた。

 これに対して最高裁は、確かに相続開始時には更地であり、居住用建物の敷地として現実に使用されていなかったものの、被相続人は従前、現実に居住の用に供していたのであるが、土地区画整理事業による仮換地指定によって使用収益が禁止されたため、仮設住宅への転居や建物の取壊しを余儀なくされ、建物建築も不可能な状況のまま相続が開始したものであることからすれば、特段の事情のない限り、居住の用に供されていた土地に当たると解釈するのが相当と判断した。その結果、原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があると指摘、福岡高裁に差戻しを命じる判決を下した。

(07.01.23最高裁第三小法廷判決、平成17年(行ヒ)第91号)