長期賃貸借とは認められず借地権の8割控除を否認
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/01/2003  提供元:21C・TFフォーラム



相続した土地の評価をめぐって、相続時の土地賃貸借予約契約を斟酌せずに行った更正処分等の可否が争われた事件で、徳島地裁(村岡泰行裁判長)は長期賃貸借としての性格を有していたとはいえないことから原処分は適法と判示、納税者の主張を斥けた。

 この事件は、被相続人から相続で取得した土地には賃貸借契約が交わされており、賃借権の残存期間は30年であると判断した相続人が、80%減額して課税価格を計算、相続税の申告書を提出したことが発端になったもの。これに対して、原処分庁が賃借権の残存期間は10年しかないため借地権の控除割合は2.5%相当額と認定、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者がその取消しを求めて提訴していたという事案だ。 

 つまり、事件のポイントは土地の賃貸借予約契約が長期賃貸借の性格を有していたか、短期賃貸借の性格を有しているかの判断にあったわけだ。

 判決はまず、賃借権の評価方法に触れ、評価通達が借地権の控除割合を定めているのは相続開始時点において現実にその効力が発生して自用地の利用を制約している賃借権等を対象にした規定であると解釈。その解釈を踏まえて、各賃貸借契約に触れて契約条項に盛られた目的、期間、賃貸借料、解除等々の事実認定を行った。

 その結果、賃貸借契約が数次にわたって期間を区切って更新されてきており、相続開始直前に締結されたものも期間を1年とすることが明示されていること、現実に相続開始1年後に終了しているなどの事情に照らすと、明らかに長期賃貸借の性質を有していたとは認められず、原処分はいずれも適法であると判示した上で、納税者の主張を棄却した。
 
(2002.07.26 東京地裁判決、平成11年(行ウ)第14号)