審査請求時の質問検査等は担当審判官の裁量の範囲内と判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:07/03/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 相続で取得した土地をめぐって広大地としての減額評価の可否が争われる一方、訴訟前の国税不服審判所の審理手続きに違法があったか否かが争われた事件で、東京地裁(定塚誠裁判長)は審査請求人からの申立てに応じて質問検査権ないし釈明権を行使しなかったのは担当審判官の合理的な裁量の範囲内の行為であると判断、納税者側の請求を棄却した。

 この事件は、相続で取得した土地が広大地に該当するとして減額評価を求めた更正の請求を原処分庁が斥けたことから、原処分の一部取消しを求めるとともに、審査請求の審理手続きの際に原告に反論の機会を与えなかった違法があるとして、国税不服審判所の裁決の取消しを求めた事案。

 原告側は、審査請求時の原処分庁の答弁書は異議決定書のままで、その後も何らの主張をしなかったと批判。つまり、審判所は審査請求の趣旨及び理由に対応すべき主張を記載した答弁書を原処分庁に提出させず、担当審判官も審理の際に釈明権、質問検査権を適切に行使していないと指摘したわけだ。そこで原告は、実質的に反論の機会を与えられなかったとして、審理手続きも裁決も違法であると主張した。

 これに対して判決は、原処分庁側の答弁書は異議決定の理由を引用して具体的に記載されており、国税通則法93条2項の答弁書として十分な内容となっていることから、手続き違反は認められないと指摘。また、国税通則法97条1項が定める釈明請求権は審査請求人に認めたものではなく、調査を実施するか否か、調査の相手方及び調査の方法の選択等は担当審判官の裁量に委ねられたものと解釈した。

 結局、原告らの求めに応じて質問検査権ないし釈明権を行使しなかったのは、担当審判官の合理的な裁量の範囲内であって適法であるから、その行為に違法な点は何らうかがわれないと判示して、棄却している。当然ながというべきか、広大地の減額評価についても棄却された。

(2012.02.10 東京地裁判決、平成23年(行ウ)第108号)