老人ホームは終身生活が可能であり、一時的ではないと判断
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:07/14/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 老人ホームに入居していた被相続人所有の家屋の敷地に対して小規模宅地等の減額特例が適用できるか否かの判断が争われた審査請求事案で、国税不服審判所は老人ホームへの入所が一時的なものであったとは認められないことから、家屋を相続開始直前に居住の用に供していたとはいえないと認定、審査請求を棄却した。

 この事案は、宅地を相続した審査請求人らが相続税の申告の際に小規模宅地等の減額特例を適用して申告したことが発端。この申告に対して原処分庁が、相続開始直前に被相続人がその宅地を居住の用に供していたとは認められないと同特例の適用を否認してきたため、その取消しを求めて審査請求していたという事案だ。請求人らは、老人ホームは被相続人の介護を目的にした病院に代わるものであり、通常の日常生活が送れる場所ではないから、生活の拠点とはなり得ないと主張して、原処分の取消しを求めていた。

 これに対して裁決は、建物が一時的に空き家になっている客観的な事情、例えば相続開始前の病気療養のための入院等の事情が認められる場合は生活の拠点がその建物に置かれていたと解することができ、居住の用に供していたと認めるのが相当と解釈。つまり、老人ホームへの入所が一時的なものであれば、同特例の適用は認められるという解釈だ。

 しかし、老人ホームへの入所が介護目的だったことは認められるものの、終身入居が可能な有料老人ホームであり、終身生活に必要な施設を完備した専用居室を利用できる終身生活が可能な施設であり、被相続人自身も相続開始時まで老人ホームから入院治療以外に外出せずに生活していたと認定。その結果、客観的に一時的な入所であったとは認められないことから、原処分を妥当と判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2008.10.02裁決)