審判所の調査行為の必要性の判断は審判官の裁量と判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/18/2003  提供元:21C・TFフォーラム



裁決手続きの違法性を理由に、審査請求が棄却された贈与税の決定処分、無申告加算税の賦課決定処分に係る裁決の取消しを求めた事件で、東京地裁(市村陽典裁判長)は審査請求に係る裁決が遅延した場合には救済措置も設けられており、裁決の遅延を理由に、直ちに違法な裁決ということはできないと判示、納税者の請求を棄却する判決をくだした。

 この事件は、ある財団から買い受けた土地をめぐって、母から原告に対する贈与を原因とした所有権移転登記が行われた後、錯誤を理由に、移転登記の原因を贈与から真正な登記名義回復に更正する旨の所有権更正登記が行われたことに対して、原処分庁が贈与と認定、贈与税の決定処分、無申告加算税の賦課決定処分をしたことが発端。そこで、納税者が原処分の取消しを求める審査請求をしたものの棄却されたため、再度、裁決手続きに違法があったことを理由に、原処分の取消しを求めて提訴していたという事案だ。

 納税者は、審判所サイドが事情聴取を十分に行わなかったこと、単純な案件であるにもかかわらず裁決まで1年5ヵ月を要して大幅に遅延するなど、裁決手続きに違法があったのであるから、原処分は取り消されるべきであると主張していた。

 これに対して判決は、まず審判所の調査行為は審判官の裁量に委ねられており、その判断が著しく合理性を欠いているなどの理由がない限り、違法であるとまでは言えないと判示。また、裁決の遅延についても、不作為の違法確認訴訟を提起できるなど一定の救済措置が設けられており、迅速に裁決が行われなかったとしてもそのことをもって直ちに違法であるとまではいえないと判示、納税者の主張を斥けている。
 
(2002.06.14 東京地裁判決、平成12年(行ウ)第350号)