配偶者軽減特例の適用が認められない隠ぺい仮装はなかったと裁決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/23/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 この事件は、審査請求人名義の有価証券等を相続財産として修正申告したところ、原処分庁が有価証券等を当初申告に含めなかったことが、隠ぺい仮装行為(相法19の2の5)に該当するとして相続税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をしたのが発端。そこで、単に相続財産であると認識していなかったために当初申告に含めなかっただけであり、隠ぺい仮装行為はなかったと主張して、原処分の全部取消しを求めた事案である。

 これに対して裁決はまず、相続税法19条の2第5項は適正な申告の確保、課税の公平を図るため、過少申告した際に隠ぺい仮装行為に基づく金額までも配偶者の税額軽減措置の適用を認めるのは不合理との趣旨から設けられていると指摘。そうであれば、相続又は遺贈により財産を取得した者が、当初から相続財産を過少申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づく過少申告をした場合に要件が満たされると解釈。

 しかし、請求人名義の有価証券等が明らかに被相続人に帰属する相続財産であると請求人が認識していたとまで認めるに足りる証拠はなく、関与税理士から相続人名義に係る残高証明書等の資料の提出依頼を受けておらず、さらに調査の際、税務職員に請求人名義の有価証券等に関する資料の一部を自主的に提出していた点を考慮すれば、相続財産を過少に申告するという確定的な意図を有していたと認めることはできないと認定した。
 
 結局、当初から相続財産を過少申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をして過少申告したとはいえず、配偶者軽減特例の適用が否定される隠ぺい等があったとは認められないと判断、原処分を全部取り消している。

(国税不服審判所、2012.04.24裁決)