評価通達以外の船舶の評価を妥当と認め、請求を棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:08/07/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 相続で取得した船舶を評価通達136(船舶の評価)に基づいて評価すべきか、それ以外の方法による評価も許されるかが争われた事件で、松山地裁(澤野芳夫裁判長)は評価通達に基づく評価ではかえって課税事務の停滞を招く特別事情があり、評価通達以外の合理的な時価の評価方式によって船舶を評価することが許されると判断、棄却した。

 この事件は、相続で取得した船舶の評価にあたって、原処分庁が評価通達136に定める方式以外の方法で評価した上で、相続税の更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側が評価通達以外の方式による評価は許されないと主張して、原処分の取消しを求めて提訴していたもの。

 原処分庁側は評価通達による評価のベースとなる再調達価額を求めることが困難、納税者側から船舶に関する基礎資料の提出がなく課税時期における基礎資料の把握が困難であったことなどから、評価通達に定める評価方法を採用できない特別の事情があったと主張。一方、納税者側は、評価通達は行政先例法ともいうべき性格のものであるから、評価通達以外の評価方法は許されないと反論していた。

 これに対して判決は、税務調査が長期間に及んでいたことや納税者側からの鑑定意見書の提出が審査請求申立後1年経過した時期であったなどの事情から、評価通達に基づく評価方法によって船舶を評価するために調査をさらに継続することは課税事務の停滞を招くと指摘。したがって、評価通達が定める評価方式によって船舶を評価することはできず、評価通達に基づく評価ではかえって課税事務の停滞を招く特別事情があったと示唆、評価通達が定める評価方式以外の合理的な時価の算定方式によって評価することも許されると判断、納税者が求めた課税処分の取消請求を棄却する判決を下している。

(2007.02.14 松山地裁判決、平成14年(行ウ)第12号)