借地人所有建物の不在から借地権評価の実質を欠くと裁決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/21/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 相続で取得した土地に借地権に該当する賃借権が存在していたか否か、つまり相続税評価額算定の際に控除すべき借地権が存在するか否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は賃借人側の建物が存在していないことなどを理由に、借地権を評価する実質を欠いていると認定して自用地として評価すべきであると判断、審査請求を棄却した。

 この事案は、相続人である審査請求人が相続によって取得した土地の価額は借地権相当額を控除した金額であるとして行った相続税の申告に対して、原処分庁がその土地には借地権に相当する賃借権は存在しないと認定して更正処分等をしてきたため、請求人が更正処分は相続によって取得した土地上に存する賃借権を看過しているから違法であると主張して、原処分の取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して裁決はまず、土地の上に請求人所有の建物の存在は認められるものの、借地権者であるとする法人自身は建物を所有していないことから、土地賃貸借契約によって設定された借地権は未だ対抗力を有しておらず、土地の利用権について借地権者である法人が、請求人に自らの借地権を主張できない関係に立つものであると認定した。

その結果、土地賃貸借契約によって設定された借地権は、その土地の上に請求人所有の建物が存する状況下においては、法人が建物所有目的で土地を利用できず、土地の利用権を実質的に支配しているということもできない上、借地権というべきほどの資本投下もされていないというべきであることから、かかる借地権を相続税評価において借地権として評価するにはその実質を欠いている判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2008.06.27裁決)