評価通達を排してまで実績評価法を採用すべき合理性はないと判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/22/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 相続した複数の土地の評価額を評価通達ではなく、不動産鑑定評価又は実績評価法により評価すべきか否かが争われた事件で、東京地裁(谷口豊裁判長)は実績評価法による評価額は開発業者の参考にはなっても、評価通達による評価を排してまで採用すべき合理性はなく、評価通達に拠らない特別な事情があるとも認められないと判示して、棄却した。

 この事件は、複数の土地等を取得した相続人が相続税の申告をしたところ、原処分庁が土地の評価額が過少と認定、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、相続人らがその取消しを求めて提訴したという事案。複数の土地の相続のため、争点も複数にわたったが、主には評価通達に基づく評価ではなく、不動産鑑定評価又は実績評価法に基づく評価を採用すべきか否かにあった。
 
 相続人は、相続したいずれの土地も居住用にするには、整地、上下水道、ガス設備等の宅地造成工事が必要であるから未完成宅地であると主張した。未完成宅地の場合、開発業者が開発想定図に基づき、路線価と各種補正率を用いて完成宅地の評価額を算出した上で、完成宅地とするために実際に要する宅地造成工事費用を控除し、未完成宅地の時価を算出する実績評価法を用いる。そこで、実績評価法が極めて合理的な評価方法であり、原処分庁算出の評価額は相続人の算出額を上回ることになることから妥当性を欠くとして、原処分の取消しを求めたわけだ。

 これに対して判決は、相続税法22条が定める時価の考え方に触れた上で、財産評価の一般的基準を評価通達として定め、原則、画一的な評価方法で財産の評価をするのは、負担の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という観点からも合理的であり、租税法律主義にもかなうものであると解釈。しかしながら、相続人が取得した各土地には評価通達に拠らないことが正当と是認される特別の事情は見当たらず、相続人側が反証する実績評価法による評価額は開発業者の参考とはなり得ても、各土地に関する時価の算出方法としては、評価通達を排してまで採用すべきほどの合理性があるとはいえないと判示して、請求を斥けた。

(2013.08.30東京地裁判決、平成23年(行ウ)第285号)