被相続人の家族名義の預貯金等は被相続人に帰属しないと判断
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:07/01/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 被相続人の家族名義の預貯金等が相続財産に該当するか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、管理の状況、原資となった金員の出捐者等々を総合的に勘案すると被相続人帰属の相続財産とは認められないと判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、原処分庁が、審査請求人ら及びその親族名義の預貯金等は相続財産であるにもかかわらず、相続財産として申告しなかったのは事実の隠ぺい又は仮装行為に当たると認定、相続税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端となったもの。

 そこで請求人らが、原処分は違法であるとしてその全部取消しを求めて審査請求したもので、調査手続の違法性、預貯金等の帰属、国税通則法68条1項の「隠ぺい又は仮装」の有無が争点になった。原処分庁は、請求人らの申述や代理人から提出された預貯金等に関する金額の移動状況等を記載した資料に基づき、被相続人の相続財産に該当する旨主張した。

 しかし裁決は、原処分庁が使用印鑑の状況や保管場所等の管理状況について具体的な立証を行わず、その出捐者についても相続開始日前3年間の被相続人の収入が多額だったことなどを理由に挙げるのみで、具体的な出捐の状況を何ら立証していないと指摘。また、審判所の調査から、被相続人、請求人ら及びその家族の名義で金融機関に提出された印鑑届等の筆跡・印影から、各名義人が預貯金等を管理・運用していたと推認されるものの、その出捐者が誰であるか認定することはできず、被相続人から請求人らに対する贈与の事実の有無についても贈与がなかったと認めるには至らないと判断した。

 その結果、預貯金等の管理・運用の状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実の有無等を総合的に勘案すると、いずれに帰属するのかは明らかでなく、結局、被相続人に帰属する、つまり相続財産に該当すると認めることはできないと認定して、原処分を全部取り消している。

(国税不服審判所、2013.12.10裁決)