賃貸借契約が継続していれば貸家建付地評価も可能と裁決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:10/18/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 相続で取得した借地権に係る家屋の一部が貸家に該当するか否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は賃借人が不在、家賃未払い状態であっても、賃貸借契約は継続しているため貸家として評価すべきであると判断、原処分を一部取り消した。

 この事案は、相続税の申告をめぐって、原処分庁が借地権の申告漏れを指摘した上で、借地権に係る家屋の一部が貸家に該当していないと認定、更正処分等をしてきたため、その取消しを求めて審査請求されていたもの。

 原処分庁は、家屋に関する公共料金の使用実績が相続が開始した年からなく、賃料の支払いも確認できず、空家状態だったのであるから賃貸されていた事実はないという認定をしたわけだ。そこで、請求人は家屋を自由に使用できる状態ではなかったのであるから貸家評価すべきである、また家屋が老朽化し借地権の無償返還が決まっているから正常な状態の家屋が存在する借地権と同じ評価をすべきではないと主張して、原処分の全部又は一部取消しを求めていたわけだ。

 これに対して裁決は、賃借人が電気・ガス・水道を使用していなかったとしても、不在のためであり、賃貸借の目的になっていないという理由にはならないと指摘。また賃料の未払いは認められるものの、被相続人が賃借人に解約の申入れをした事実がなく、借地借家法には賃料の未払事実を解約とみなす規定もないことから、家賃の未払後も賃貸借契約は継続していたと認定。さらに、相続開始後も賃借人が荷物を置いて家屋を占有していた事実等からすれば、相続開始日において賃貸借の目的となっている貸家であると認められという理由から原処分を一部取り消した。一部取消しとなったのは、家屋の老朽化等を考慮して各借地権を一体として評価すべきであるという請求人の主張は斥けたため。

(国税不服審判所、2009.10.23裁決)