株式等の価額増加分は贈与によるものと判断、棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:01/19/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 時価より著しく低い価額で資産の譲渡を受けたことに伴い、同族会社の資産の価額が増加した場合、その会社の株主又は社員に対して贈与があったとみなされるか否かの判断が争われた事件で、東京高裁(水野邦夫裁判長)は一審の判決内容を支持して贈与があったものと判断、同族会社の代表者らの控訴を棄却した。

 この事件は、酒類食料品等の卸売等を営む株式会社と不動産賃貸を業とする合名会社、有限会社の代表者であり社員等であった者の母親が、所有していた有限会社の出資持分を株式会社・合名会社に譲渡したのが発端。その後、代表者から子(控訴人の1人)が合名会社の出資持分と現金を贈与されたことを受けて贈与税の申告をしたところ、原処分庁が祖母からの出資持分等の譲渡が時価より著しく低い価額でされた結果、株式会社の株式、合名会社の出資持分の価額が増加したことから、代表者は対価を支払わらずに利益を受けたと認定した。

 その上で、株式等の増加部分に相当する金額は母親からの贈与によるものとみなし、代表者に贈与税の決定処分、無申告加算税の賦課決定処分をする一方で、子にも株式等の増加分を贈与によるものと判断、贈与税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴したものの一審で棄却されたことから控訴したという事案。控訴人らは、相続税法9条が定める「利益」は資本等取引に起因する利益であることを要し、損益取引による利益はこれに当たらないという主張を展開した。

 しかし控訴審も、相続税法9条の利益が法文上その発生原因となる取引を限定していると解すべき理由はないと指摘。その上で、会社の資産の価額が増加することを通じて、譲渡者から株主又は社員に贈与と同様の経済的利益が移転したとみることができるから、株式又は出資の価額増加部分に相当する金額を贈与によって取得したものと取り扱う趣旨と解されると指摘して一審判決を支持、控訴人らの主張を棄却する判決を言い渡した。

(2015.04.22東京高裁判決、平成26年(行コ)第457号)