相続しない財産も含めて相続税額を計算するのが仕組みと判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:08/20/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 公正証書遺言により原告以外の相続人が取得した不動産を原告の相続税の課税対象としてされた相続税の決定処分の取消しを求めた事件で、東京地裁(八木一洋裁判長)は相続税法の仕組みに照らせば原告の主張はその前提を欠くと判示して、棄却した。

 この事件は、原処分庁から相続税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を受けた納税者が、公正証書遺言により原告以外の相続人が取得した不動産を原告の相続税額の計算の際に含めたのは誤りと主張して、課税処分の取消しを求めて提訴した事案。被相続人の不動産は公正証書遺言に基づいて原告以外の相続人がすべて取得し、所有権移転手続きもされているのであるから、一切取得していないという思いが強く働いた結果として、課税処分の取消しを求める訴訟に至ったという事案である。

 これに対して判決は、現行の相続税法の仕組みを説明した上で、各相続人の相続税額の算出にあたっては各相続人に係る相続税の課税価格を合計する必要があり、自ら取得していない財産の価額であっても算定しなくてはならないと指摘。また、決定処分の際には、原告が公正証書遺言の対象とされた不動産を取得していないものとして、納税すべき相続税額が算出されているとも指摘した。

 つまり、各相続人の相続税額を算出する際には各相続人の課税価格を合計する必要があり、自ら取得していない相続財産の価額も算定しなくてはならないというわけだ。さらに、この事件では未分割の財産もあったため、相続税法55条(未分割遺産に対する課税)に基づいて各人の課税価格が計算されることになる。仮に、分割が完了し、取得した財産に係る課税価格が、決定処分において計算された課税価格と異なることとなった場合は、相続税法32条1号(更正の請求の特則)に基づいて更正の請求をすればいいと判示して、原告側の主張は全て棄却した。

(2013.04.19東京地裁判決、平成22年(行ウ)第753号)