医療法人の出資は財産全体を基礎に評価するのが妥当と判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:08/03/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 社団医療法人の増資直後の出資持分の評価方法が争われた事件で、最高裁(竹内行夫裁判長)は贈与税の課税に当たっては医療法人の財産全体を基礎に出資を評価することが合理的と判示、控訴審判決を破棄した上、納税者側の控訴も棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、社団医療法人の増資に伴って被上告人(納税者側)が出資を引き受けた際に、著しく低い価額の対価で利益を受けたことがみなし贈与に当たると認定、課税当局が贈与税の決定及び無申告加算税の賦課決定処分をしたことが発端。そこで納税者側がその取消しを求めて提訴したところ一審が国側勝訴、二審が納税者側勝訴となったため、国側が上告していたもの。

 控訴審は出資社員の権利内容を考慮、評価の前提となる資産価値は運用財産を基準にすべきであり、類似業種比準方式による評価の前提を欠くから、出資一口当たりの評価額は出資金額を上回るものではなく、納税者側が著しく低い価額の対価で利益を受けたとはいえないと判断して、納税者側の主張を認容する判決を言い渡した。

 これに対して上告審は、医療法人は私企業と性格を異にするものでもなく、その収益は内部に蓄積されるため、財産分配の際は剰余金の配当を禁止する医療法54条に違反しない限り、出資割合に応じた払戻しを受けられると指摘。また、類似業種比準方式によって出資を適切に評価できない特別の事情が存しない限り、同方式によって出資を評価することには合理性があるから、基本財産を含む財産全体を基礎に評価することには合理性があるという判断をした。結局、控訴審を破棄、納税者側は増資に伴う出資引受けにより、著しく低い価額の対価で利益を受けたと認定した1審判決を支持する判決を言い渡した。

(2010.07.16 最高裁第二小法廷判決、平成20年(行ヒ)第241号)