国外の土地使用権は貸借対照表価額に基づく評価が妥当
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:08/25/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 国外にある関連会社の土地使用権、建物、機械設備等の相続税評価額の算定が争われた審査請求事案で国税不服審判所は、評価会社の出資を純資産価額方式で評価する際は、評価会社の直前期末の貸借対照表価額に基づく評価額になると指摘した上で、審判所認定額を上回る原処分の認定額の一部を取り消す裁決を下した。

 この事案は、父親から贈与を受けた国外所在の法人への出資に係る贈与税について、原処分庁が、同法人が出資した同国内の各関連会社が有する土地使用権等の相続税評価額を貸借対照表上の価額に基づいて計算して同法人の純資産価額を算出して決定処分等をしてきたことが発端となった。

 そこで、審査請求人が土地使用権等の相続税評価額は零円であると主張して原処分等の一部取消しを求めたという事案だ。つまり請求人は、各資産が国外においては日本国内における借地借家法のような借地人保護の法律がなく、その取得費は使用期限の中途で返還しても使用期間に応じて返還されるものではないこと、さらに建物に固定資産税評価額がないことから、相続税評価額は零円であると主張していたわけだ。

 これに対して裁決はまず、土地使用権が譲渡及び抵当権の設定が可能な財産であり、工業用地として有効利用されているから財産価値があると認定。しかし、国外にある土地使用権の価格動向を把握できないことから、使用期間に応じて減価させた金額によることが相当と指摘した上で、評価会社の直前期末の貸借対照表に記載された土地使用権の金額が取得価額を基に使用期間に応ずる減価を反映したものとなっていることから、その貸借対照表価額を受贈日における相続税評価額とみなしても不合理ではないと判断した。結果的には、審判所認定額を上回る原処分の認定額を一部取り消すという裁決になった。

(国税不服審判所、2008.12.01裁決)