相続させる旨の遺言の効力は代襲者までは及ばないと判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/05/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 税務訴訟ではないが、遺言書を作成する際に留意しておきたい判決が最高裁(田原睦夫裁判長)で言い渡された。というのも、公正証書に基づくいわゆる「相続させる」旨の遺言の効力が代襲相続人にまで及ぶか否かの判断が争われた事案で、特段の事情のない限り代襲相続人にまでは遺言の効力は及ばないと注目すべき判決を言い渡したからだ。

 この事件は、相続人の一人に遺産のすべてを「相続させる」旨の公正証書遺言をしたものの、被相続人が亡くなる前に、その相続人が先に亡くなってしまったことから争いになったもの。つまり、被相続人が亡くなった後、遺言から外れた他の法定相続人が公正証書による遺言内容は効力を失ったと主張して、相続させるとされた相続人の代襲者等に対して相続財産である不動産の共有持分権の確認を求めて争われてきたという事案である。

 これに対して最高裁は、「相続させる」旨の遺言は、その遺言によって遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合は、相続させる旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況等から、遺言者が推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当であると判示して控訴審の判断を支持、代襲者側の上告を棄却している。

 判決文を逆読みすれば、被相続人よりも先に相続人が死亡するような特殊な事情にも備えて、代襲者への相続を優先するならば、特段の事情を考慮した公正証書遺言の作成が肝要とも言えるわけだが、法定相続人に関する現行の民法上の最後の砦を守った判決ともいえよう。

(2011.02.22最高裁第三小法廷判決、平成21年(受)第1260号)