夫が肩代わりした妻の老人ホームの入居金の返還金は贈与税非課税
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:05/24/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 妻が介護付き有料老人ホームに入居する際に夫が肩代わりした入居金の返還金が相続財産に含まれるか否かの判断が争われた事件で東京国税不服審判所は、夫から妻への贈与は認められるものの、介護が必要な配偶者の生活費に充てるために通常必要と認められるものであり贈与税の非課税財産に該当することから、相続開始前3年以内の贈与でも相続財産には加算されないと判断して原処分を取り消した。

 この事件は、介護を必要とする妻が老人ホームへの入居の際に支払う入居金を夫が肩代わりした後、1ヵ月後に夫も同じ老人ホームに入居したが、4ヵ月後に妻よりも先に夫が亡くなって入居金が返還された。そこで請求人らが、その返還金を相続財産に加算して当初申告した後、入居金は配偶者に対する生活保持義務の履行であるから贈与には当たらないと判断して更正の請求をした。

 しかし原処分庁が、贈与にはあたらないものの、入居金の一部は被相続人の配偶者に対する金銭債権に該当するから、相続税の課税価格に算入されると認定して相続税の更正処分をしてきたため、その取消しを求めた事案である。つまり夫が妻のために支払った入居金が贈与税の非課税財産に当たるか、夫が入居契約に係る返還金相当額の金銭債権を有しているか否かが争点になっていたわけだ。

 これに対して裁決はまず、入居金の定額償却部分を家賃等の前払分と判断するのは相当ではなく、夫が妻に対して返還金相当額の金銭債権を有しているとはいえないと指摘。また、事実認定の結果、介護を必要とする配偶者の生活費に充てるために通常必要と認められるものであるから、入居金相当額は相続税法21条の3第1項2号が定める贈与税の非課税財産に当たると認定。結局、相続開始前3年以内の贈与であっても贈与税の非課税財産である以上、相続税の課税価格には加算されないと判断して、原処分を取り消した。

(東京国税不服審判所、2010.11.19裁決)