相続開始後に相殺された預貯金は相続財産に含まれると裁決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:12/14/2005  提供元:21C・TFフォーラム



 相続開始2年後、金融機関によって貸付金債権と被相続人が有していた預貯金等が相殺された場合のその預貯金等が課税財産に含まれるか否かが争われた事案で、国税不服審判所は金融機関が行った相殺は双方の債権が相殺適状になった時まで遡るものの、相殺は相続開始日の後であるため、預貯金は相続財産を構成すると認定、審査請求を棄却した。

 この事案は、被相続人が自ら経営する会社が金融機関からの融資に係る連帯保証をしていたことが発端になったもので、相続が開始した日、被相続人はその金融機関に定期預金と普通預金を有していた。

 ところが、被相続人の養子であった請求人らには遺産を何ら取得させない旨の遺言がされていたため、遺留分の減殺請求を行った結果、調停によって被相続人が有していた定期預金と普通預金をそれぞれ4分の1ずつ取得するという合意が整ったものの、その後、被相続人が経営していた会社に対する手形貸付債権とそれぞれの預貯金を金融機関が相殺したことを受けて、請求人らは期限後申告の特則に基づいて課税価格をゼロ、納付税額を10万円余とする申告を行ったわけだ。

 これに対して、原処分庁が更正の上、無申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて審査請求したという事案だ。請求人らは、民法506条2項が定める相殺の効力は相続開始の日まで遡るから、預貯金は相続開始日に消滅しており、相続財産には含まれないと主張していた。

 しかし裁決は、手形借入金債務の返済期限は相殺適状が生じた日となるから、相殺の効力はその日に遡及するものの同日よりも前には遡及しないため、預貯金は相続開始日に被相続人の預金として存在していたと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2004.11.19裁決)