母から請求人名義口座への入金に係る贈与認定を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:12/03/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 預貯金口座への入金の原資が母親の預貯金口座から出金された金員つまり贈与であるか否かの判定が争われた事案で、国税不服審判所はその推認はできないから贈与による取得とは認められないと判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、審査請求人が複数年にわたって複数回にわたり母親から預貯金口座を通じて現金の交付を受けたことを、原処分庁が母親からの贈与により取得したものと認定、贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、請求人側が母親からの贈与により取得した金員ではないと反論の上、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 これに対して原処分庁側は、請求人の母名義の預貯金口座からの出金に係る金員が請求人名義の預貯金口座への入金に係る金員に対応する関係にあることから、請求人が母から金員を取得したものであると主張して審査請求の棄却を求めた。

 しかし裁決は、出金日から入金日までの間隔は長いもので約1年10ヵ月もあいている上、出金に係る金員の管理・保管状況が明らかではなく、入金日と同日に請求人名義の預金口座からそれぞれの日の入金額を上回る出金がされている場合もあることに加え、対応関係にない請求人名義の預貯金口座への入金の事実があることも踏まえると、各入金の事実のみからだけで、直ちにその原資の全てが各出金に係る金員であるとの推認はできないと指摘。
 
 また、原処分庁が主張の根拠とした申述や提出資料の信用性を認められないため、対応関係の存在を認めることもできないと指摘。さらに、審判所の調査によっても、母から請求人へ金員の受渡しがされた事実を認めるに足りる証拠は見当たらないと指摘した。そうした事実認定から、結局、請求人が母から各出金に係る金員を取得つまり受贈したとは認められないと判断、原処分を全部取り消している。

(国税不服審判所2013.02.28裁決)