評価通達に拠り難い特別な事情を認定、原処分庁認定額を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:04/01/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 土地の相続開始時の時価を評価する際に財産評価基本通達(評価通達)により難い特別な事情があるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、評価通達に基づく評価額が時価を上回る場合は評価通達の定めにより難い特別な事情があると指摘、他の合理的な評価方法による評価が許されるとして原処分を一部取り消した。

 この事件は、審査請求人が相続で取得した土地を不動産鑑定評価額に基づく価額で課税価格を計算して相続税の申告をしたところ、原処分庁が評価通達に基づく評価額によることが相当として申告内容を否認、相続税の更正処分等をしてきたため、請求人らがその全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側が相続した土地の相続開始時の価額(時価)は評価通達に基づく評価額によるべきと主張して審査請求の棄却を求めたのに対し、請求人らは評価通達により難い特別な事情があることから、不動産鑑定士による鑑定評価額によるべきである旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 これに対して裁決は、不動産鑑定評価額は、都市計画法33条の開発許可基準に関する審査基準を満たしていないため、相続開始時の時価とは認められないが、土地開発の際に、袋路状道路の敷設は認められないなど特殊な制約が相続開始時にあった事実を認定。そこで審判所自らが不動産鑑定評価を依頼してその評価額を検討したところ、開発法に係る審査基準を満たしており、相続開始時の時価として妥当なものと判断した。

 その結果、評価通達に基づいて算定された価額が時価を上回る場合は評価通達により難い特別な事情がある場合に該当するから、そうした場合は他の合理的な評価方法で評価することが許されると解釈した。
 
 結局、原処分庁の評価額は審判所の評価額を上回り、土地の評価の際に評価通達により難い特別な事情があったと認定するとともに、相続開始時の土地の価額は審判所が依頼した鑑定評価額とするのが相当であると判断、原処分を一部取り消している。

(国税不服審判所、2013.05.28裁決)