被相続人の損害賠償債務は債務控除の対象にならないと裁決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/24/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 被相続人の損害賠償債務が相続税の課税上、相続財産から控除すべき債務に当たるか否かの判定が争われた事案で、国税不服審判所は制限納税義務者である請求人の相続税の課税上、控除すべき債務には当たらないと判断、審査請求を棄却した。

 この事案は、日本国籍を有しない審査請求人が被相続人の相続に伴う相続税の申告において、被相続人が代表取締役を務めていた法人の管財人から請求されていた損害賠償金の未払金等を相続財産から控除すべき債務として申告したところ、原処分庁がその未払金等は控除すべき債務には当たらないとして更正処分等を打ってきたため、その取消しを求めていたものだ。

 つまり、被相続人が、代表取締役を務めていた更生手続中の会社所有の機械を売却処分したことで被った損失は、被相続人が取締役会の決議を経ずに行った背任的な行為によって会社に損害をあてたものであるとして、管財人から損害賠償金の請求をされ、その和解交渉中に相続が開始したという事案だ。

 これに対して裁決は、相続で取得した不動産には、被相続人に対する損害賠償請求権を保全するための仮差押えがされているのみであって、相続開始日現在、債務に係る留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権は成立していないと認定。その結果、債務は相続税法13条2項2号に掲げる「その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権」によって担保される債務には該当しないと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2008.06.25裁決)