評基通を画一的に適用できない特別の事情があると棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:09/14/2004  提供元:21C・TFフォーラム



 相続開始前に行った株式の現物出資によって設立した有限会社の出資に係る評価方法の判断が争われた事件で、東京地裁(鶴岡稔彦裁判長)は財産評価基本通達185を画一的に適用する事例には当たらないと指摘、原処分庁主張の類似業種比準方式による評価が妥当と判示して納税者の取消請求を棄却した。

 この事件は国分事件と呼ばれていたもので、最近の事件では珍しく判決がおりるまでに4年余りが費やされている。そもそもは被相続人が代表者を務める株式会社の株式を低額で現物出資して有限会社を設立、その出資の52%相当分を取引先に売却した8日後に相続が発生したことが発端になったもの。

 そこで、相続人らは有限会社の出資を配当還元方式で評価するとともに、当時の法人税等相当額51%を控除して出資1口当たりの評価額を算定、その相続税評価額を前提に相続税の申告をしたわけだ。しかし、原処分庁は類似業種比準方式による評価方法を採用するとともに法人税相当額の控除も否認、更正の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて争われていた事案だ。

 これに対して判決は、被相続人が設立した有限会社はもともと現物出資された株式の株式会社が同族株主である合名会社、相続人らは特殊関係法人にあたるとともに、同族株主にも当たることから、類似業種比準方式による評価が妥当と判示。評価差額に対する法人税等相当額の控除についても、評基通185を利用して意図的に多額の評価差額を作出する経済的合理性のないケースにまでそれを認める必要はないと棄却した。つまり、評価通達を画一的に適用することが著しく不適当な特別の事情があると判断したわけだ。

(2004.03.02 東京地裁判決、平成12年(行ウ)第90号)