有料老人ホームの入居一時金等の返還金は相続財産と裁決
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:11/06/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 有料老人ホームの入居一時金等の返還金、返還見込額が相続財産に当たるか否かの判定が争われた事案で、国税不服審判所は入居者の死亡または入居契約の解約権の行使を停止条件とする金銭債権は相続財産に当たると判断、審査請求を棄却した。

 この事案は、被相続人の死亡に伴って生じる有料老人ホームの入居一時金、追加入居一時金、さらに健康管理費に関する返還金及び返還見込額のすべてが相続財産に該当するとして原処分庁が相続税の更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、審査請求人がその一部は相続財産ではないとして取消しを求めていたもの。

 請求人は、被相続人が相続の時点で有していた権利は返還請求権を含む入居一時金ではなく、老人ホームの施設を終身利用できる権利であり、相続も譲渡もできない一身専属権的な性格のものであるから、相続税法2条に定める相続財産には該当しないと主張した。

 これに対して裁決は、被相続人らが締結した老人ホーム入居契約の内容は被相続人らの自由な意思でいつでも解約でき、契約が解約された場合は返還金として契約に定める所定の金員を支払う特約付きのものであると認定。また、入居一時金等の一部返還の契約内容は施設利用料や事務費、人件費の前払分等として受け取ったものであることを考えれば、入居契約時点において被相続人らには老人ホームの居室等の終身利用、サービスを享受する権利とともに、死亡または解約権を停止条件とする金銭債権が生じているとも認定した。その結果、その金銭債権は金銭に見積もることができる経済的価値のある権利として相続財産に該当し、一身専属的権利とは言えないと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2006.11.29裁決)