武富士事件、控訴審は国側が逆転勝訴、納税者側が上告へ
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:02/19/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 海外に居住する長男への海外子会社株式の贈与に対する贈与税課税が妥当か否かの判断が争われたいわゆる武富士事件の控訴審で、東京高裁(柳田幸三裁判長)は贈与を受けた長男の生活の本拠は国内にあったと認定して原審の判決を否定、国側勝訴の逆転判決を言い渡した。納税者側はこれを不服として上告、最終決着は最高裁に移ることになった。

 この事件は、武富士の故会長とその妻が保有していたオランダ籍の子会社株式を香港居住の長男に贈与したことに対して、原処分庁が贈与時点の長男の主たる生活の本拠は日本にあったと認定、1000億円を優に超える課税処分をしたのが発端になっている。争点は長男が贈与時点に海外に居住していたか否かにあったが、当時の相続税法では在外財産を非居住者に贈与した場合は贈与税の課税対象から外れていた。

 そこで納税者側が贈与当時は国外に生活の本拠があったと主張、原処分の取消しを求めて提訴したところ、東京地裁がその主張を認容して課税処分を全部取り消したため、国側が控訴していたという事案だ。

 平成12年度の税制改正で海外を利用したこれらの節税スキームもすべて封じられたが、法律で規制される前の贈与に対する課税処分が妥当か否かという問題も抱えていた。

 しかし、控訴審は事実認定の上、香港滞在期間中も生活の本拠は国内にあったと認定した上で原審の判断を否定、課税処分を妥当とする逆転判決を下している。事件は最高裁に移ったが、事実認定だけの問題にとどまらず、法律で規制される前の贈与行為に対して課税することの可否も含めた判断が望まれる。上告審がどのような判断を下すか注目が必要だ。

(東京高裁平成20年1月23日判決、平成19年(行コ)第215号)