過納金の還付請求権は被相続人の相続財産と判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:01/20/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 被相続人が生前に提訴していた課税処分取消訴訟の地位を承継した相続人に取消判決の確定を受けて還付された過納金が相続財産を構成するか否かの判定が争われた事件で、福岡高裁(石井宏治裁判長)は相続財産を構成しないと判示して納税者の主張を認容した原審(大分地裁)判決を取り消し、相続財産を構成すると判断、国側勝訴の逆転判決を下した。

 この事件は、実母である被相続人が生前提訴していた所得税更正処分等取消請求事件の地位を承継していた相続人に還付された取消判決の確定に伴う過納金を、原処分庁が被相続人の相続財産に当たると認定、相続税の更正処分を行ってきたため、相続人が過納金の還付請求権は相続開始後に発生した権利であるから相続財産を構成しないと主張して原処分の取消しを求めていたもので、原審の大分地裁が納税者側の主張を認容して原処分を取り消したことから、国側が控訴して原審判決の取消しを求めていたという事案だ。

 控訴審の福岡高裁は、所得税更正処分の取消判決が確定したことにより、被相続人が所得税更正処分に従って納税した日に遡って過納金の還付請求権が発生していたことになると指摘するとともに、取消判決の遡及効を制限する特段の規定もないと指摘。その結果、過納金の還付請求権は被相続人の死亡時に被相続人の有していた財産に該当し、相続税の対象となることから、原処分は相当であり取り消す理由はないと判示して、納税者敗訴の逆転判決を下した。

(2008.11.27 福岡高裁判決、平成20年(行コ)第9号)