相続財産が原資でも相続開始後に発生したものは相続財産外
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:08/12/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 実母の課税処分取消請求訴訟を承継した相続人が、取消判決の確定に伴って還付された過納金の還付請求権が相続財産を更正するか否かの判定が争われた事件で、大分地裁(一志泰滋裁判長)は相続開始後に発生した相続人の権利は、それが被相続人の財産を原資とするものでも相続財産には該当しないと判示、国側の主張を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、課税処分取消請求訴訟の係属中に死亡した母親の地位を承継した相続人が取消判決の確定に伴って過納金の還付を受けたことが発端。そこで既に実母から相続した財産の申告は済ませていたため、過納金・還付加算金を一時所得として申告したところ、原処分庁が過納金を相続財産と認定して相続税の更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴した事案だ。

 原処分庁は、原告への還付は実母の財産を相続したことに起因するものであるから還付請求権の発生時期が相続開始後であっても、相続財産を構成すると主張して、審査請求の棄却を求めていた。

 判決はまず、相続開始後に発生して相続人が取得した権利が、実質的に被相続人の財産を原資とするものであっても相続財産には該当しないと解釈。相続財産は相続開始時に相続人に承継された金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべてであり、かつそれが限度になるという考えからだ。また、訴訟が係属中であり、過納金の還付請求権が発生しておらず、取消判決が確定したからといって、過納金の還付請求権自体が納付時に遡って発生することはないとも解釈。結局、原告の地位の評価額を還付金相当額に改めた上で増額更正処分を行うことは許されないと判示した。国側はこれを不服として控訴した。

(2008.02.24 大分地裁判決、平成17年(行ウ)第13号)