生前贈与の確定的な意思はなかったと認定、生前贈与の事実を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/24/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 相続人名義の預貯金が被相続人から生前贈与されたものか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(谷口豊裁判長)は、預貯金等を贈与する旨の書面が作成されていないことを理由に、預入当時、名義人に贈与する確定的な意思があったとは認められないと判断、棄却した。

 この事件は、相続税の申告後、相続財産として計上した預貯金のうち、相続人等名義の預貯金は被相続人からの生前贈与財産であるとして更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴したというもの。

 つまり、被相続人から相続人に生前贈与した旨の贈与契約があったか否かが争点になった事案で、被相続人が贈与税の非課税枠内で、毎年、相続人等名義による定期預貯金という形で贈与し、相続人も被相続人から相続人名義の定期預貯金を非課税枠内で贈与する旨を言われていたことから、生前に贈与された財産であると相続人側は主張した。

 これに対して判決は、被相続人が相続人に届出印を返還した後も、申告預貯金にかかる証書を自ら保管していた事実等に加え、預貯金等を贈与する旨の書面が作成されていないことを勘案、被相続人が相続税対策として贈与税の非課税限度額内で相続人ら親族の名義で預貯金の預入れを行っていた事実は認められるものの、証書を手元に保管して相続人らに迅速に交付せず、相続人や被相続人に具体的な資金需要が生じた際に必要に応じて解約し、かつ各名義人の預貯金の金額と直接関係のない金額を現実に贈与したり、自ら使用することを予定していたとみるのが相当という認定をした。

 その結果、被相続人には、預入れ当時、将来の預入金額又はその後の預入れに係る預入金額を直ちに各名義人に贈与するという確信的な意思があったとは認められないという判断から、相続財産に帰属すると判示して、請求を棄却している。

(2014.04.25東京地裁判決、平成25年(行ウ)第104号)