財団法人への株式の贈与に係る非課税特例の適用を否定
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:01/28/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 財団法人に対する株式の寄附がいわゆる公益法人等に対する贈与に係る非課税特例(措法40(1))の適用が受けられるか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(川神裕裁判長)は、寄附された株式の配当金が寄附後2年以内に全額助成金として支給されたという事実が認められないことから、寄附株式が財団法人の公益事業の用に直接供されたとは認められないと判断、非課税特例の適用を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、財団法人を設立するための額面50円の株式500万株の寄附が、公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の贈与に当たると納税者が判断、租税特別措置法40条1項後段の譲渡所得の非課税特例の承認申請をしたのが発端になったもので、国税庁長官がこの申請を認めなかったため、その取消しを求めて納税者が提訴したという事案。

 納税者は、承認申請の審査の際に公益増進に関する要件等の該当性を厳格に判断すべきではなく、民間が担う公益活動の促進という趣旨に合致するかどうかの観点から、全体として承認に値するかどうかの判断がされるべきであると主張した。

 しかし判決は、措置法40条の趣旨を解釈した上で、株式等のようにその性質上直接公益事業の用に供することができない財産は、各年の配当金のように寄附財産から生ずる果実の全部が公益事業の用に供されているかどうかによって、公益事業の用に直接供されているか否かを判定して差し支えない旨を定めている措置法40条通達の9ただし書きは合理的な指針であると指摘。

 また、寄附株式に係る配当金が寄附後2年以内に全額助成金として支給されているかどうかの事実認定をした結果、配当金が2年内に全額助成金として支給されたという事実は認められず、寄附株式が財団の公益事業の用に直接供されたということもできないと認定した。さらに、この非課税特例は所得税法59条1項1号の例外規定であるから、要件解釈は厳格にすべきであるとも指摘、要件を知らなかったというやむを得ない事情があったとは認められないと判示して、棄却している。

(2013.09.12東京地裁判決、平成24年(行ウ)第303号)