相続の開始を知った日は別件訴訟の送達の日と判示して棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:11/17/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 申告期限後の相続税の申告書の提出をめぐり、相続の開始があったことを知った日の判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、相続の開始を知った日は別件訴訟の死因贈与契約の有無に関する訴状の送達の日であり、その日から起算して10ヵ月以内に申告されなかったことに正当な理由も認めがたいと判示して、相続人側の訴えを棄却した。

 この事件は、被相続人の死亡の日から3年弱経過後に、唯一の相続人である甥が申告書を提出したことに対して、原処分庁が相続の開始を知ったのは被相続人の死亡の翌年であるから法定申告期限を徒過した申告と認定、無申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、相続人である甥が国税通則法上の正当な理由が認められ、相続の開始があったことを知った日は申告書提出の2週間前であると主張して、原処分の取消しを求めて提訴した事案である。

 というのも甥側には、被相続人の従妹から死因贈与契約があったことを理由に、不動産の所有権の移転登記手続きを求める訴えを起こされた後、申告書が提出された2週間前に成立した裁判上の和解を踏まえ、申告書を提出したという事情があったからだ。つまり、相続の開始を知った日とは別件訴訟の訴状が従妹から送達された日か、従妹との間で和解が成立した日かが争点になったわけだ。

 しかし判決は、従妹から送達された別件訴状には被相続人の死亡や相続人が甥のみであるなどの事実が正確に記載されており、その訴状が送達された時(つまり相続開始後1年余経過後)に、相続の開始及び被相続人の相続人であることを知ったものと認められると指摘した上で、別件訴状が送達された日に自己のために相続の開始があったことを知ったものと認めるのが相当であると判示して、相続人である甥側の請求を斥けた。

(2015.02.27東京地裁判決、平成25年(行ウ)第730号)