貸付債権の回収が実質的に不可能とは認められないと棄却
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:10/28/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 相続した同族会社への貸付債権が回収不能か否かつまり元本価額で評価すべきか否かの判定が争われた相続税事案で、国税不服審判所は過去に返済が滞ったことはなく、借入金が多額でも事業経営が実質的に破綻しているとはいえないと認定、審査請求を棄却した。

 この事案は、審査請求人らが相続によって取得した貸付金が回収不能であり、相続開始日の貸付金債権の評価額は零円であるとして申告したことが発端。しかし原処分庁は、貸付金債権は相続開始日において回収不能ではなかったと認定、相続税の更正処分等をしてきたことに対して、請求人らが貸付金債権の評価を評基通にそって評価することは妥当ではなく評価額は零円であると主張、原処分の取消しを求めていた事案だ。

 というのも、同族会社には返済期限の迫っている銀行借入金の返済原資がなく、賃貸用建物の売却代金をもってしても銀行借入金を完済できる状況になかったことからしても、会社の事業経営は相続開始日に実質的に破綻し、貸付金は回収不能債権であると認識したからだ。

 裁決は、借入金が多額でも、返済条件に従った返済がされている限り、債権者がそれ以上求めることはなく事業経営の継続は可能である、会社の収入は年々減少しているが、相続開始後解散までの間は営業を継続しており、事業経営が破綻しているとはいえない、さらに会社の賃貸用建物が他の請求人に譲渡され、その譲渡代金で借入金が繰上返済され、その結果、会社の主たる資産及び収入の手段がなくなり、会社解散に至った事情を総合勘案すれば、相続開始日において債務者である会社の事業経営が破綻していることが客観的に明白であると認めることはできないと指摘、審査請求を棄却した。

(国税不服審判所、2007.10.10裁決)