他の共同相続人に係る債務等超過分の控除は合意が必要
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:09/27/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 他の共同相続人に係る債務等超過分を審査請求人の相続税の課税価格から控除できるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、他の共同相続人の債務等超過分を課税価格から控除するためには債務等超過分を控除することが可能な者の合意が必要であると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、遺産の一部の未分割、債務及び葬式費用に係る各相続人の負担金が未確定であることから法定相続分に従って課税価格を計算して申告した後、訴訟による未分割財産の確定を受けて、他の共同相続人に係る債務等超過分も入れて課税価格を計算すると課税価格が零になるとして更正の請求をしたのが発端になっている。

 しかし、原処分庁がすべての共同相続人の合意がないことを理由に債務等超過分の控除を否認してきたため、その取消しを求めて審査請求された事案である。請求人側は、相続税法基本通達13-3のただし書きが債務等超過分を控除するに当たって共同相続人の合意が必要であるとは定めていないことから、債務等控除分を控除すべきであると主張して原処分の取消しを求めていた。
 
 これに対して裁決は、共同相続人の中に債務等超過分を控除することが可能な者が複数いる場合、それぞれが任意に債務等超過分を自己の相続税の課税価格から控除して申告できるとなれば、債務等超過分が重複して控除されることになり妥当性を欠き、同通達がそのような事態まで許容する趣旨でないことは明らかと指摘。つまりそうした場合は、債務等超過分をどのように配分するかについての調整・合意がされていることが前提になっていると解釈するのが相当というわけだ。しかし、請求人の場合、他の共同相続人の合意を得ていないから、相続税の課税価格の計算上、他の共同相続人に生じた債務等超過分を控除することはできないと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2010.03.15裁決)